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2007年12月13日 (木)

散った椿

 「あなたの描く絵はとても日本的だね」。
 京都在住の絵本作家さんが、フランス人にそう声をかけられたのですって。彼女の描く絵は、日本画ではなくファンタジー絵画。愛らしい妖精などをモチーフにされているので、私たち日本人から見ると、どちらかといえば西洋的なイメージにも思えるのですが…。
 そのフランス人が日本的だと感じたのは、苔むした地面に真っ赤な椿の花が散っている一枚の絵でした。
 「私たちが愛でるのは、枝についている今は盛りの花。だから、枝から落ちた椿の花に目をとめることはない」と、そのフランス人は言いました。
 落ちた椿の美しさに目をとめるのは、日本人の美意識なのですね。
 いけばなの世界でも、西洋と日本では、違いがあります。西洋のフラワーアレンジメントやフラワーアートでは、いけあげたその瞬間が最高になるように、開いた花を多用します。ところが、日本のいけばなは、莟の状態でいけあげる。そして、その花の命の移ろいを最期まで見届けます。莟がほころび、満開を迎え、やがて散り行く。その移ろいのすべてを、等しく大事にしています。いけばなには最高の瞬間がないのです。
 よく考えれば、人間だってそうですよね。生まれたての赤ん坊でもお年寄りでも、命に軽重はありません。
 日本人は、かけがえのない命を大切に慈しんできました。だからこそ、散った花にさえ、命の尊さを見出すのですね。

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