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2008年5月 1日 (木)

650年の伝統

 初めて、能を体験しました。
 能の演目は、神(しん)男(なん)女(にょ)狂(きょう)鬼(き)の5つに大別できます。最初の3つは、神、男性、女性を題材にしたもの。そして、狂はわが子を奪われて捜し求める母、鬼は怨霊を描いたものが中心です。演じる順も、神男女狂鬼の順。最近では5番すべてを演じるのではなく、その中から2つくらいの演目が選ばれます。
 おもしろいのは、おもて(能面)や装束には、すべて決まりごとがあるということ。分かりやすい例は、おもての髪の描き方。「女」のおもてでは整っている女性の髪の毛が、「狂」のおもてでは少し乱れ、「鬼」ではかなりの乱れ髪となっています。髪の毛が、登場人物の心が表現しているのですね。装束の色にも決まりごとがあります。若い女性には紅色の入るものを用い、裏地の色も紅色。これが白色の装束なら、高貴な女性を表します。扇でも、上両端の色が、紅色(妻紅)であれば若さ、紺色(妻紺)であれば老いを表すのだそう。装束や道具の決まりごとを知れば、能に対する興味も自然と増してきます。
 さて、今回体験させて頂いたのはシテ方。謡と舞を担当する能の主役です。
 まずは謡。先生と向かい合って有名な「高砂」のお稽古です。情景を思い浮かべながら、遠くまで届くようにお腹から大声を出します。但し、息を吐き切ってしまうと息継ぎに時間がかかります。少し余力を残すくらいにしておけば、息継ぎもスムーズですし、声にも深みが出てきます。先生のお手本に続いて、謡うのですが、節が難しく大苦戦。人前で披露できるようになるまでには、かなりの修行が必要です。
 次に、舞の稽古。まずは基本の姿勢や摺り足に続いて、刀の扱いも学びました。基本は寸止めで、刀をあわすことはありません。しかし、これが意外にアクロバティック。切られる方は、大きな音をたてて宙返りをしたり、後方にバタンと倒れこんだり。
 そして今回は特別に、装束を身にまとい、おもてをかけさせて頂きました。装束は大柄に見せるためにかなり分厚くて重く暑いこと、おもてをかけると視野がほとんどなくなること、また充分に空気を吸えないので息苦しいことも分かりました。本来ならば、装束をつけるまでに、5~7年修行するのだそうです。とても貴重な体験でした。
 私の友人にも能楽師がいます。彼とはこれまでに何度も同じ舞台に立っています。といっても、もちろん私が能を演じるわけではありません。能の演目には、植物が登場するものが多くあります。例えば「吉野天人」なら桜、「羽衣」なら松。そこで、まずは私が能の演目にちなんだいけばなで舞台を装飾し、友人がそのいけばなの前で能を演じるといったコラボレーションに挑戦しているのです。今回の経験を生かせば、次回の友人とのコラボレーションは一味違ったものになるに違いありません。

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